シロアリの種類と侵入経路

「こんな小さな虫が、なぜこんなにも危険な害虫なのだろう…」と皆様は思われるかもしれませんが、シロアリは一度家屋に侵入してしまうと、家屋の木部や家具まで食い荒らしてしまいます。

もともとシロアリは森林の枯れ木などを分解し、土に戻す役割の益虫です。しかし、最近では森林の乱伐など環境の変化により、シロアリも一般家屋の床下などに巣を作るようになりました。床下や壁の隙間にシロアリの巣(コロニー)が形成されると、素人では発見が難しく、「気が付いたときには床が抜けたり柱が傾いていた」といった話もよく聞かれます。

特に平成7年の阪神大震災の際には、倒壊した家屋にシロアリの食害跡が多く見られ、社会的な問題として大きく取り上げられました。

沖縄に生息するイエシロアリは、季節に関係なく家屋を食い荒らすため、侮ることができない昆虫です。そのため、定期的なシロアリの調査および防除施工は必要不可欠です。

沖縄で家屋等に被害を及ぼす主なシロアリの種類

日本に棲息するシロアリは、ミゾガシラシロアリ科・オオシロアリ科・レイビシロアリ科・シロアリ科の四つの科に分けられますが、なかでも建築物に多大な被害を及ぼすシロアリはミゾカシラシロアリ科の『イエシロアリ』『ヤマトシロアリ』の2種類です。

イエシロアリ

イエシロアリ職蟻と兵蟻

  • 沖縄では、イエシロアリの巣が高い密度で存在し、地下に巨大な巣を構築しています。これらのアリは新しい材料や乾燥した木材まで摂取し、建物に対して激しい被害を引き起こすことがあります。
  • 職蟻の体長は約7.4~9.4mmであり、特に水を運ぶ能力に優れています。地上数十メートルまで被害を及ぼすこともあります。
  • 兵蟻は頭部が体長の1/3を占め、卵型をしており、刺激を受けると頭部から白い分泌液を放出します。沖縄でのイエシロアリの有翅虫(羽アリ)の飛行時期は5月から7月頃であり、夕方から夜間にかけて街灯などに大量に集まってきます。

ヤマトシロアリ

ヤマトシロアリ職蟻と兵蟻

ヤマトシロアリ職蟻と兵蟻

  • ヤマトシロアリは、北海道を除く日本全域に分布しており、土台や床束などの損害箇所に巣を形成します。
  • 職蟻は体長が約4.5~7.5mmほどで、湿気のある環境と腐朽した木材を好んで摂取します。
  • 兵蟻の頭部は体長の約1/2の大きさで、長方形の形状をしています。
  • 沖縄のヤマトシロアリの羽アリは主に2月から3月の昼間に活動し、特に雨上がりの日に飛来します。
  • ヤマトシロアリは水を運ぶ能力はあるものの、やや劣っており、その活動範囲はイエシロアリよりも狭いです。そのため、被害箇所は通常、地面よりも1m~1.2m以内に多く見られますが、地上2階部分でも絶えず水を確保できる場所では巣を構築します。

シロアリの生態

シロアリは、一つの巣(コロニー)を一つの族社会とみなし、フェロモンという化学物質を互いに体内から放出することで、微妙なコミュニケーションを行う非常に高度な社会性を持っています。

また、分泌されるフェロモンは、そのコロニー内でのみ有効な特有のものであり、例えば別のコロニーのシロアリが侵入してきた場合でも、微妙なフェロモンの違いによって敵と認識してしまいます。

シロアリのフェロモンについては、学術的には未解明な点が多いとされていますが、現在では「道しるべフェロモン」「警報フェロモン」「階級調整フェロモン」といったフェロモンが確認されています。

道しるべフェロモン

■ 職蟻が仲間を誘導するためのフェロモン

職蟻は絶えず餌場探しをしておりますが、食物源を見つけると左図のように、道しるべフェロモンを分泌し、仲間を餌場に誘導します。為に、シロアリが移動する時には、列が数珠つなぎになります。

警報フェロモン

■ 外敵からコロニーを守る時に出すフェロモン

外敵がコロニーに侵入してきたときなどに警報フェロモンを出します。すると兵蟻は、大顎を重ねて警戒音を発しながら、コロニー防衛のために攻撃を開始し、また職蟻は、土などで防衛壁を造り外敵の侵入に備えます。
よく、シロアリの被害個所を軽く叩くと「キリキリ」と言う音を聞く事がありますが、これは、多くの兵蟻が一斉に警戒音を発している音です。

階級調整フェロモン

■ 階級の調整をするフェロモン
各階級のシロアリの数の比率などを調整するフェロモンです。例えば何らかの原因で兵蟻が減少した時などにフェロモンを分泌して、階級比率を操作し、その必要数を補うようにするなど、まさしく神秘とも言うべきライフ操作を行います。

シロアリはどのように侵入するのか

シロアリの侵入のしかた

シロアリの侵入(クリックすると大きな画像が出ます)

沖縄の家屋は白蟻被害を受け易い

上記画像をクリックすると大きな画像が見れます。
沖縄の家屋は、台風対策のために、殆どが上の図のような、ブロックやコンクリート(RC)造りになっております。更にまた、どの家屋でも、白蟻侵入対策で土間にコンクリートを打つなど工夫をしているようですが、実際は、築年数が経ちコンクリート部分に亀裂などが生ずると、白蟻は容赦なくそこから侵入してきます。

沖縄の家屋におけるシロアリの侵入のしかた

  • 土間コンクリートと、布基礎部分の亀裂から侵入。
  • 配電用のパイプ等から侵入。
  • ブロックの内部孔から侵入。
  • 羽蟻の群飛時期に、家屋に侵入して、水気の多い場所に巣を作る。

シロアリの発見法

建物をシロアリから守るには早期発見がなによりも重要です。シロアリが侵入しているかどうかは、素人でも下記の手がかりで簡単に調べられます。

家屋の周りや庭を調査

白蟻調査のポイントはまず庭の調査から行います。白蟻はコロニーから約50~100mの距離を移動しながら餌場を探します。

もし庭に白蟻の被害が見つかれば、そこから半径50~100m以内にコロニーがあるものと断定でき、家屋にシロアリが侵入する可能性も高い状態にあると言えます。

調査方法は、庭の木材やダンボール箱をどかして、土やコンクリート部分との接触部分を調べます。
また庭の添え木や濡縁の下など、普段日の当たらない場所に食害や蟻道が無いかを調べてみます。
右の写真は、放置されていたベニヤ板をどかした際、シロアリの蟻道を確認した時のものです。

蟻道や蟻土の確認

▼蟻道(ぎどう)
シロアリは土でつくったトンネル(蟻道)をつくって侵入してきますので、建物の基礎や束石・土台などの表面に蟻道がついていないかを調べましょう。

▼蟻土(ぎど)
シロアリは木材の割れ目や継ぎ目に排出物や土砂(蟻土)を運んできて詰めたり、盛り上げたりします。ときには内部がシロアリの巣になっていることもあります。

シロアリの食痕や空洞音

柱のシロアリ被害

シロアリは木材の軟かい春材部を好んで食べ、硬い秋材部を食い残しますので、木口面では年輪に沿って同心円状の食痕を示します。

またシロアリは光や風を嫌い木材の表層を残して内部だけを侵食しますので、木材の表面から軽くたたいて空洞音がするかどうか確認したり、また強く押したり、ドライバーでほじくってみるのもよいでしょう。
シロアリが侵入して、食害が進んでいる場合は、簡単に穴があいたり、こわれたりします。

右は、すでに柱の中身を全て食い荒らした柱の写真です。既に食べるところが無くなったのか、表面にまで食害が及んでいる状態です。

群飛(羽蟻)…沖縄での群飛の時期

イエシロアリの羽アリ(有翅虫)▼ヤマトシロアリの羽蟻は、2月~3月迄の昼間に群飛。殊に雨上がりで、風のない日に群飛します。

▼イエシロアリの羽蟻は。5月~7月迄の夜に群飛。電灯や街灯などに群がってきます。

いずれにしても、シロアリの群飛が近所で見られた場合は、シロアリの巣が近くにあると言う事であり、気をつけなければなりません。